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2010年12月28日 (火)

来日公演ミュージカル「Avenue Q」

Avenue Q

東京国際フォーラム ホールC

12月22日 マチネ

最前列センター

 

NYでAvenue Qを見てきたという知人の多くが、僕は絶対にこの作品が気に入るはずだと口をそろえて言うのでどのような作品なのか非常に気になっていたミュージカル。ずーっと観たかったんですが、ついに来日公演が実現し、先行販売初日にチケットを取ったところ、最前列のセンター席を取ることができてしまいました。

作品は2005年に大ヒット作のWickedを抑えてトニー賞で作品賞、脚本賞、作曲賞を受賞しています。

大学を卒業したものの人生の目的を見つけることのできないプリンストンがNYのAvenue Qで暮らし始め、そこで個性豊かな隣人達と出会うのだが・・・

Avenue Qの住民たちは以下の通り

プリンストン(白人/パペット):大学の国文学科を卒業したばかりの青年。

ロッド(白人/パペット):銀行に勤める。ゲイ疑惑あり。

ニッキー(白人/パペット):無職のロッドのルームメイト。

ケイト(モンスター):ロマンティックな恋愛を夢見る幼稚園のアシスタント。

トレッキー(モンスター):インターネットでのポルノ鑑賞を愛するモンスター。

クリスマス・イヴ(日本人):修士号を2つ持つのに顧客のいないセラピスト。

ブライアン(ユダヤ人):コメディアンを夢見る無職の32歳。クリスマスイブの婚約者。

ゲイリー・コールマン(黒人):落ちぶれてしまったかつての子役スター。Avenue Qの管理人。

 

いやはや、確かにこれは面白い。

とにかく脚本が秀逸すぎる!!

でもってすぐに口ずさめてまうメロディに溢れた音楽もとても良くって、サントラ聴いて、ここ数日毎日のように歌って過ごしてます。ただ、歌詞の内容が色々ときわどいんですけどね・・・。

■ 設定の話

この作品、すぐに気がつくのは人間とパペットが出演しているということ。パペットのデザインを見ればすぐに分かりますが、「セサミ・ストリート」をパロディにしているんですね。タイトルも「アベニュー」と「ストリート」で被ってますし。

しかし、人形を使っているからと言って愉快なファミリー向けミュージカルなのではなく、アメリカの抱える社会のタブーをするどくついた皮肉たっぷりの作品になっていて、放送禁止用語も連発されるし、パペット同士のベッドシーンなどもあって見た目の可愛さとは裏腹にピリリと風刺のきいた大人向けのエンターテイメントに仕上がっていました。

パペットには2種類あって、アメリカの白人であるキャラクターは全員人型のパペットになっていて、それとは別に、モンスターとよばれる毛むくじゃらの人種がいて、作中世界ではモンスターは差別を受けているという設定です。

人間がそのままの姿で演じている役は黒人、日本人、ユダヤ人というマイノリティの設定で、こういうキャラクター設定からも人種問題への皮肉が伺えるわけです。実際に作中でも人種差別を歌う「Everyone is little bit racist」(誰もが少しは差別主義者)と言う曲出てきます。 

 

■ストーリーの話

物語は、社会のタブーになってるようなことに正面から向き合って、それを見て見ぬふりをするのではなく、人生色々、社会も色々なのだから、細かいことにとらわれて悩んでいるくらいだったら、全て笑い飛ばして前向きに生きていこうというメッセージに溢れていましたね。特に作中で歌われる歌にそれが一番現れていたように思います。(歌については下記参照)

セサミストリートで描かれるアメリカってあまりにポリティカリー・コレクトで桃源郷的すぎるわけで、現実の社会とのギャップがある。子供の時にセサミストリートを見て育っても、大人になったらそうしたギャップと否が応でも向かい合うことになってしまうわけです。そんなモヤモヤを見事に表現してくれるのがこの作品なのでしょう。

この作品がヒットしてるということが、アメリカの社会が見た目以上に未だ多くの問題を抱えているということを反映しているのだろうなと思います。

 

■キャラクターの話

一番のお気に入りのキャラは色々と悩んだ結果、ケイトかなぁ。

ちょっと痛々しい夢見る乙女なところが面白かったです。CDの曲のタイトルだけで一喜一憂しすぎ(笑)。さらにエンパイア・ステートビルで待ち合わせって、「めぐり逢えたら」かよ!と思わずつっこまずにはいられません。

あと、バッド・アイデア・ベアーズ!可愛い顔して悪魔のささやきをする愛すべき2人組。

 

■役者さんの話

この作品、顔が見えるように人形を操作して、役者さんの表情や動きがそのまま人形の顔や動きであるように見せていて、見事なまでの人形の操りっぷりは惚れ惚れとしてしまいます。そして何がすごいって、8体の人形をわずか4人で操っているということ。

当然一人2役以上するわけで、人形を操作する4人は、さらに声色を使い分けての演技になるわけで、非常に難しい役だということは一目瞭然。しかも、各自がメインで担当するキャラが同時に舞台上に現れるときは、別の人物が一体を代わりに操ったり、場面が転換するたびに別の人形を持って登場したりするんですが、顔出しをしているにも関わらず、役者の個性を完全に殺して、そうした複雑なところを全く感じさせずに舞台を見せてくれたのが本当に素晴らしかったです。

てか、これ考えた人天才だよ!

 

■歌の話

特に気に入った歌にコメントを。

・"The Avenue Q Theme"

この舞台、両側にモニターがついてて、子供向け教養番組にありがちなアニメーションを使用した解説が映しだされたりするんですが、このオープニングナンバーの場面も、モニターにお日様キラキラな映像が出ていて、それが絶妙のところで安っぽくて良い感じでした。

 

・"It Sucks To Be Me"

これはキャラクター紹介を兼ねた1曲ですが、それぞれが自分の不幸自慢をするという内容で、作品の導入としてとてもよくできた1曲だと思う。

 

・"If You Were Gay"

ニッキー、良い奴だなぁと思う一方で、慌てふためくロッドも可愛いです。ニッキー、歌が終盤に進むにつれ、ちゃんとロッドが愛するオールドスタイルなブロードウェー調に曲を盛り上がってるし。「but I'm not gay」って最後につけるところなんか、憎めないよね。あと、この曲、仮定法の練習に丁度よさそうですね(笑)。

 

・"Everyone's a little bit racist"

これは超名曲でしょう。人種ネタのオンパレードで、際どいジョークに溢れていますが、人種ごとに違いがあるのは事実なんだから、全てを見ないことにして平等を叫ぶよりも、そのことを認めた上で神経質にならずに、お互いを尊重し合おうという力強いメッセージを感じます。

あと、アメリカにおける人種ごとのステレオタイプなイメージを知ることができる点でも興味深い1曲。

この曲でクリマスイブが「L」と「R」の発音がメチャクチャなことを笑われる場面がありますが、これ以外の場面でも彼女はLとRが区別できない設定を貫いていましたね。彼女が歌う曲のタイトルも「The More You Ruv Someone」となっていて、「Love」が「Ruv」となっています。これはもう苦笑するしかないのですが、事実なのだから仕方がない・・・。

 

・"The Internet Is For Porn"

ケイトがインターネットの素晴らしさを歌うたびに、「ポルノのためにね!」とトレッキーがちゃちゃを入れてくる愉快なナンバー。挙句の果てに、Avenue Qの男性陣が総出で「インターネットはポルノの為」と連呼しはじめるんですが、最後の最後、最低すぎる下ネタを使って韻を踏んでるところが絶妙すぎて、こんなバカなことに才能をおしみなく使っているこの作品のクリエーターさんたちが愛しくなってくる1曲でした。

 

・"Mix Tape"

プリンストンからお気に入りの曲を集めたCDをもらったケイトが曲のタイトルに一喜一憂するナンバー。ヒット曲ばかりの平凡な選曲なところにプリンストンのキャラクターが現れています。

ディズニーからの選曲が2つあってそこに"Kiss The Girl"が入ってるのがちょっと嬉しい。

あと、ビートルズ率が高いね(笑)

 

・"Schadenfreude" / "The Money Song"

不幸な人を見ると、自分でなくて良かったという安心感を得られる。不幸なことが続いても、それが他人を喜ばせているんだよと歌う皮肉な曲"Schadenfreude"と、募金をすれば神になったような心地(優越感)が得られるから皆で募金しようと呼びかけるこれまた皮肉たっぷりな"The Money Song"。この作品の本質をよく表している曲だと思います。

 

・"For Now"

最終曲。良いことも悪いことも長続きはしない、全ては「今だけ」なんだと歌う曲で、だからこそ一瞬一瞬を大切にしようという、とても良いことを歌ってるのに、最後は「今だけ」をテーマにしたあるある大喜利合戦な展開で、「毛があるのも今だけ~」などと歌い始めるのがとても愉快。

オリジナル版はクライマックスで「ジョージ・ブッシュも今だけ!」というネタをだしてきて最後の最後まで風刺がきいてるんですが、今回の来日版はここで、今世間を騒がしている芸能ネタを出してきました。オリジナルにあわせるなら、時流的にも政治的な方面でいってもドンピシャリに大爆笑になったと思うのですが、ちょっと、というか、かなり控えめにしてましたね。

 

外にも、「アパートの外に人生がある」なんかは広い世界を見ようと呼びかける素敵な曲だし、「大学に戻りたい」なんかも人によってはそうとう心に突き刺さるかもしれませんね。1曲1曲が明確なテーマを持ちつつ、それをファミリー向けな明るい曲調と、ジョークをたっぷりと盛り込んで楽しく歌うのがかなりツボでした。

 

■お気に入りの場面

一番気に入ってるのは、プロポーズに悩むプリンストンの頭上に現れる巨大ケイトモンスター。まさかあんなところにあんな特大サイズのパペットが隠れていたとは!!!

あと僕が観た回、ケイトモンスターの学校が建って幕を下ろす場面でひもを引っぱったのに幕が下りないというハプニングがありました。すぐに気をきかせてブライアン役の役者さんが屋上へと駆け上がって手動で幕を下ろしたんですが、その一連のハプニングを見事に作中の一幕のエンタメに変えて拍手喝采の場面にしたブライアン役の役者さんのプロ魂に感動しました。

 

■その他

最前列の鑑賞は目の前をさえぎるもの何もなくて、オケピがあるおかげで舞台に近すぎることもなく、特等席で鑑賞している気持ちになれるのが良いですね。自分がいた席からは座っていてもオケピの中の指揮者さんの譜面台が見えたこともあって、ちょっと変わった臨場感が味わえたり。

 

  

次の観劇予定は3月のJoseph。こちらも楽しみ!

 

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