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2010年12月15日 (水)

「絶対製造工場」 カレル・チャペック

絶対製造工場 (平凡社ライブラリー)

絶対製造工場
(Továrna na absolutno)

カレル・チャペック
Karel Čapek

平凡社ライブラリー 2010. 8.
(original 1922)

チャペックの作品は結構好きで、エッセイなども含め色々と読んでいるのですが、この夏に平凡社ライブラリーからなかなか面白いタイトルが発売になりました。

物質に含まれているエネルギーを完全に放出し、利用することのできるエネルギー装置が発明され動力源として瞬く間に普及するのだが、その際、物質に含まれている「絶対」(=神)も同時に放出されるため、世界中に「絶対」が溢れてしまう。

「絶対」にふれた人々は宗教者となり、世界中に奇跡が蔓延し、ついには、人々がそれぞれの神の名のもとに争い始め世界大戦が起こってしまうのだが・・・

「絶対」によって引き起こされる騒動を連作短編のような形式で、皮肉とユーモアたっぷりに描きだしていく。

神を大量生産するというアイデアは、工場化が進んだ20世紀前半に登場してしかるべきものかもしれませんが、それにしても斬新で、かなりのインパクト。普通に最近書かれたSFと言っても通用するんじゃないでしょうか。ロボットといい、チャペックあなどれません。便利な道具が人の力をはるかに超える作用を起こして事件が起こるというのは「ロボット」と基本路線は同じですね。

アイデアの勝利といった感じが強い作品であるのはいなめくて、この設定に基づき、起こり得る様々なできごとを連作短編形式で綴っているわけですが、1つ1つのエピソードも、微笑ましかったり、ピリリと辛い風刺がきいていたりで、なかなかに楽しめる作品でした。

宗教の問題やそこから起こる戦争などを徹底的に風刺してはいるものの、書かれている内容はユーモアの枠をはるかに超えて、妙な現実感があって、普通に起こり得そうなことばかりですよね。特に、1920年代に書かれた作品にもかかわらず、1940年代に世界大戦が起こって、日本とアメリカが戦うという記述もあって、ちょっとした預言書なのではないかという気さえして読みながら背筋がゾクゾクっとしてしまいました。

チャペック作品ではおなじみの味のあるとぼけた感じのイラストが良い感じで作品にはまっていたのも良かったです。

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