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2011年1月31日 (月)

「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー

伊坂幸太郎

新潮文庫 2010. 11.
(original 2007)

単行本発売当初から良い評判ばかりを耳にするので、とにかく早く読みたかった作品です。文庫派を貫いているので、映画が公開された頃はネタバレを恐れて予告編などもできる限り見ないようにしてました。

文庫化を知った時は、過去の伊坂作品の中でも一番嬉しかったですね~。

そんなわけで映画版も未見でわりとまっさらな状態で読みました。

舞台は街中に監視カメラの付いた「セキュリティポッド」が設置されるようになった架空の仙台。金田首相が凱旋パレードの最中に突然暗殺されてしまう。そして、その事件の犯人として報道されたのは数年前にアイドルを救助したことで一躍時の人となった元宅配ドライバーの青柳雅春であった。

一方、青柳雅春は大学時代の友人森田に呼び出され久々の再会を果たしている最中に首相暗殺事件が発生する。やがて、思わぬ濡れ衣をきせらることとなった青柳は逃亡を始め、かつての仲間たちとの絆によって青柳の運命が大きく動き始める・・・。

いやぁー、これはめちゃめちゃ面白いじゃないですか!!

伊坂作品に求めているものが全て詰め込まれた作品で、この作品が書かれた時点での伊坂幸太郎文学の集大成といっても過言ではないと思います。

とにかく先へ先へとページをめくる手が止まらず、一気に最後まで読んでしまいました。初めての作品としてはオススメしがたいかもしれないけれど、伊坂作品を何冊か読んだことがあって、それを面白いと感じている人には間違いなくイチオシの作品です。

この作品の面白さはとっても映画的で小説というメディアでここまでハリウッド映画のような娯楽性を描くことができるというのも驚きで、引っぱり方から盛り上げ方、適度にハラハラさせて、ユーモアもあって、ニヤリとさせて、心を温かくさせて、涙まで誘ってしまう書きっぷりにただただ引き込まれてしまいました。

作中に散らばめられた謎が全てすっきりと解決するわけではないんだけれど、主人公の逃亡劇をここまでセンチメタルに描き上げて、ミステリーの体裁を取りながらも謎には踏み込むことよりも人情ドラマに焦点をあてるという軸をぶらさずに描いたのも良かったなぁと思います。このあたりは「20年後」を先に描き、読者にある程度のネタバレをしてしまうという作品の構成にも現れていたと思います。

作中、最もガツーンとやられて涙腺がゆるみそうになってしまったのは、かつての仕事仲間である岩崎と再会する場面。「信頼」が大きなテーマになっている作品だけれど、全てのエピソードの中で最もそれを感じたのがこの場面でした。ちょっと狙い過ぎな大学時代の仲間とのエピソードよりも、こういうちょっとした先輩とかが何の疑いもなく信頼してくれるっていうほうがずっと熱い。

なんてこと言いながら、ラストシーンには思わず涙が出そうになったんですが・・・。

ただ、これまでの伊坂作品の集大成とは言ったんだけれど、これまでの伊坂作品と違って、コレという癖の強いキャラクターがいなかったんですよね。一人一人はちゃんと愛すべく人々なんだけど、たとえば『砂漠』の西嶋みたいに強烈な個性がいつまでも記憶に焼きつけられるような人物がいないんですよねぇ。だからつまらないかというとそういうわけでもないんですけど。

すでに小説として十分「映画」的な印象が強いのでこれを映像化する必要はないんじゃないかと思ったんですが、映画のほうもかなり評判が良いのでとても楽しみです。

(その後無事映画版も見たので、後日映画版の感想も書きます。)

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コメント

こんばんは。
ここ暫く少々多忙で、更新も儘ならず、すっかりお邪魔が遅くなってしまいました。

まずは、これが文庫化されて、ようやくお読みになれて、おめでとうございます。
文庫化された暁には、絶対読まれるとは思ってましたが、長かったですねぇ…
でも、待った甲斐がありましたね!まさに、この時点での集大成、
これまでの作品が伏線ともいうべき、伊坂ファンなら絶対に嬉しい1作でした。

今回も、心憎い台詞や思わず落涙する場面が巧い具合に配置されてて、
あまりにも面白くて、ページを繰る手が止まらなくて、
滂沱の涙に暮れながら、布団の中で一気に読んでしまいました。
この作品を語ると、滅茶苦茶長くなってしまいそう・・・

映画の感想もお待ちしてます。

投稿: 悠雅 | 2011年2月 2日 (水) 21時32分

>悠雅さん

この作品はこの数年間、
ずーっと一番読みたい本だったので、
ようやく文庫になって読むことができたのが
本当に嬉しかったです。

このような時は、
期待ばかりが高まってしまって、
実際に読むと拍子抜けしてしまうことも多いのですが、
この作品にはそんな心配は無用でしたね~。
人の絆の温かさを感じられる作品で、
自分も涙腺をゆるませながら読み、
期待以上の面白さに大満足でした。

この作品は小説で十分すぎるほどに面白いのだから
映画化する必要なんてないのではないかとさえ思ったのですが、
映画版は映画版でまた面白かったですね~。

近いうちに映画版の記事も書きますので、
そのときはまたどうぞよろしくお願いします~。

投稿: ANDRE | 2011年2月 5日 (土) 00時33分

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俺は犯人じゃない伊坂幸太郎 著 新潮社 [続きを読む]

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