「In other rooms, other wonders」 Daniyal Mueenuddin
in other rooms, other wonders Daniyal Mueenuddin 2009 |
面白そうな洋書を探しているときに、海外の雑誌や新聞の2009年のベスト本の記事を色々と見て回っていて見つけた1冊。ピュッリッツァー賞の候補にもなったようで、なかなか面白い作品でした。
パキスタン系アメリカ人によるパキスタンを舞台にした連作短編集です。
収録されている8つの短編に共通するのは、Harouniという大地主が登場すること。ほとんどの物語が彼のもとに仕える使用人たちを主人公として、生き生きとしたパキスタン人の生活の中にちょっとほろ苦い人生模様を描き出していました。
大地主自身の生活がダイレクトに描かれることはほとんどないんですけど、短編の主人公たちの人生に少しずつ顔を見せる彼の姿に、連作短編を通して彼の人生も浮き彫りになっていくのも面白かったですね。
タイ系作家の書いた「観光」にも通じる地域密着型の短編集なんですけど、パキスタンでの暮らしなんてのは、これまでほとんど見聞きしたことがないので、それを読むだけでも面白かったんですが、短編の中に主人公たちの人生を描く割と大きな視点での物語も多くて、物語そのものがとても読み応えのある作品が多かったです。
全体の傾向としては、貧しい境遇の主人公が頑張って幸せを掴むも、それもつかぬ間で・・・、という内容が多かったかなぁ。
8つの中で特に気にいった短編は以下、
"Nawabdin Electrician"
第1話目がとても良かったので一気にこの作品の世界に引き込まれたといっても過言ではありません。頑張って働いてきた主人公が念願のバイクを手に入れるも・・・という内容で、まだ見ぬパキスタン人の生活が目の前にありありと浮かんでくる見事な書き方にほれぼれとしてしまいました。なんか人生の厳しさをがつーんと感じさせるストーリーにも良かったです。
"Abougt a burning girl"
ちょっとした探偵モノ要素があって、激しい感じのタイトルとは裏腹にこの中では珍しく爽やかな読後感のある一編。
"Our lady of Paris"
この短編の中では異色のパリが舞台の作品。いつもの地主の息子と付き合っているアメリカ人女性の物語です。こういう異文化の出会いを描く作品は良作が多いけれど、これはかなり良かったですねー。
これ、邦訳出したら普通に海外文学ファンの人々が好む内容だと思うので是非とも邦訳を出していただきたい。自分も微妙に英語が難しくて、完璧に理解したとは言い難いし・・・。
現在、たまっている記事を仕上げていくことに専念している為、1つ1つの短編をゆっくりと読み返す時間もなく、軽めの感想になってますが、もしかしたら後でもうちょっとしっかりと感想を書くかもです。
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