「縛り首の丘」 エッサ・デ・ケイロス
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縛り首の丘 エッサ・デ・ケイロス 白水Uブックス 2000. 8. |
映画「運命のボタン」の記事を書いた際、この本に収録されている「大官を殺せ」をお薦めいただいたので、以前からずーっと気になっていた1冊を手に取ってみました。
ポルトガルの作家による中編「大官を殺せ」と「縛り首の丘」の2編が収録されています。
どちらの作品も奇想天外な物語なんだけれど、とぼけたシュールさがなかなか愉快なお話でした。
それでは1作品ずつ感想を。
・「大官を殺せ」
あるとき王国内務省の官吏テオドーロは書物の中に呼び鈴を鳴らせば見ず知らずの中国の裕福な大官が死にその財産を相続できるとの一節を目にし、目の前におかれた呼び鈴を鳴らせという謎の男からの問いかけに応じてしまう。
それから一ヵ月が経ったある日、テオドーロのもとに中国人大官ティー・チン・フーが亡くなり、その遺産を彼が相続したとの連絡が入る。突然、大金を手にし、テオドーロは一躍時の人となるが、次第に罪悪感に襲われるようになり、やがて自ら中国へ赴こうと決意するのだが・・・
あぁ、確かに「運命のボタン」と似てますね。映画はリチャード・マシスンが原作だったので、マシスンがこの作品に着想を得たのかなぁ。英語を使って色々検索してみたものの、それらしき情報を得ることはできなかったんですが、あまりに基本設定が酷似してます。
でもって、この作品、映画を見る前に自分が思っていた主人公が罪悪感に悩まされるという展開になっていて、自分としてはこういう方向の物語のほうが好きなこともあり、とても面白く読むことができました。
(余談ですが、「運命のボタン」はその後原作も読んで見たのですが、シンプルな原作のオチは結構好きです。)
さて、この物語、主人公が人間的でなかなか面白いです。大金を手にした彼を描くところなんか、「天使のテオドーロちゃん」ですし(笑)。「リスボンがわが足元にひれ伏」すというその豪奢な生活っぷりはなかなかのものです。
でもって、散々遊んだ末に罪悪感に苛まれ、相当自分勝手な論理でもって中国行きを決意する下りも非常に愉快。しかも、彼が想像する遺産をもらえなかった遺族たちの妄想がまたなかなかに面白い。「まさに中国風の拷問ではないか!」とか1人で熱くなっちゃってるし。
中国に行ってからも、知ってる中国語を聞かれて「マンダリン」と「チャー」の2つだけと答えるとか、航海が「穏やかで退屈」とか言ってるんだから、せめて渡航中にもうちょっと勉強して!!でもって、なんだかんだで結構中国満喫しちゃってるし。
などなど、主人公が実にイケてない男でとても楽しい物語でした。
最後に一番ツボだった会話を。
「それでもまだ貴殿の良心が許さない、亡霊があらわれ続けるのなら・・・」
「どうしたらいいでしょう?」
「やつの喉を掻き切ってやりなさい」
「ありがとうございます、将軍」
「ありがとうございます」って、だったら最初から掻き切っちゃいなYO!と思ってしまった僕。
そして、最後の最後、なんか良いこと言って話を閉じている「天使のテオドーロちゃん」がとても愛しいのでした。
・「縛り首の丘」
主人公ドン・ルイはいつも通う聖母教会で見かけた嫉妬深い男ラーラ殿の妻リオノールの君に恋をしてしまう。それに気づいたラーラ殿は妻を連れ遠い別荘へと移り住むが、猜疑心から妻に一通の手紙を書かせる。
すっかり諦めていた愛しい女性からラブレターをもらったドン・ルイは、彼女に会うため別荘へと出発する。その途中の夜道、縛り首の丘にて丸太に吊るされた死体に声をかけられ、お役に立ちたいという死体を連れて彼女のもとへと行くことになるのだが・・・
これまたとっても愉快な物語でした。
この物語も主人公の空回りっぷりが憎めなくて素敵でしたね~。恋文もらった後の浮かれっぷりがとにかくすごい。あまりの浮かれように死体が喋ることの不思議さにつっこめないばかりか「え?そこで死体連れって行っちゃうの?」な展開がかなり面白かったです。
でもって、どこかとぼけたところのある主人公とは逆に死体がやたらめったらカッコ良い。クライマックスに至っては手に汗握って死体の活躍を見守り、ラストに至ってはうっかり別れのシーンに感動さえしちゃいました(死体自らレクチャーしてるシュールさも結構ツボ。「これでけっこうでございます」とかやたら謙虚だし)。
そしてそして、笑ってしまうくらいに主人公なんか眼中になかったのに、かなり強引にハッピーエンドなところがまた面白い。
このグロ&シュールでとぼけた感じは、ティム・バートン監督にストップモーションアニメで映像化してもらいたいなぁとか思ってみたり。無駄にミュージカルになってたりするとなお素敵。
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コメント
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有難うございます!
絶対気に入って頂けると、確信しておりました。
特に『縛り首の丘』、私も是非映画化して貰いたいです。
実写版で2回製作されたと後書きにありましたが、
ティム・バートン版、いいですね!
2度あることは3度ある、となりますように。
投稿: 中村眞希 | 2011年3月 1日 (火) 23時48分
>中村眞希さん
この本をオススメくださいまして本当にありがとうございました!
かなり楽しんで読むことができて大満足です。
「縛り首の丘」は映像向きだと思うので、
本当にどこかメジャーなところで制作していただきたいです。
投稿: ANDRE | 2011年3月 4日 (金) 01時03分