映画「ヤコブへの手紙」
postia pappi Jaakobille
フィンランド
2009
2011年1月公開
劇場鑑賞
昨年フィンランド映画祭で上映されているときに面白そうだなぁと思っていた作品が無事公開になりました。本国フィンランドでは大ヒットとなり数多くの賞を受賞したとのことです。
舞台は1970年代のフィンランドの田舎町。
恩赦を得て刑務所から出てきたレイラは、行くあてもなく、すすめられるままに盲目の牧師ヤコブのもとで嫌々ながら住み込みで働き始める。彼女の仕事は毎日ヤコブのもとに相談の届く手紙を読んで聞かせ、返事を代筆することであった。
ヤコブのもとに手紙を届ける郵便配達夫は刑務所からきたというレイラを快く思わず、配達夫は彼女を避けるようになっていく。
そんなあるとき、毎日届いていた手紙が突然1通もこなくなってしまい・・・
3人の登場人物だけで、静かに展開する物語で、派手さもないし、物語も特に驚くべき展開をするわけではないけれど、小品ではあるけれど心に深い余韻を残す作品でした。普通に良い物語。
後述しますが、公式サイトに面白い記述があって、それをもとに改めて映画を振り返ってみると、見た目以上にずーっと奥深い物語になっているようで、鑑賞中に気付けなかった自分の読みの浅さが悔やまれます。DVD出たら二度目の鑑賞をして色々と確認しなくては。
上述したストーリーを見れば分かると思いますが、この映画も北欧作品おなじみの人生にまとまわりついたような重さがあって、これまた、北欧ならではの美しい自然がそれを見守っているという作品になっていました。終盤の牧師やレイラの葛藤はなかなかの見ごたえでしたね。
これ、公式サイトに「郵便配達人を巡るギモン」として書いてある部分を見ると、呑気で人の良さそうなキャラだった彼がもしかしたら、見た目以上に曲者なのではないかと思われてきて、思っていた以上になかなか奥深い作品のようです。作品を見た人は是非、公式サイトをご覧あれ。てか、自転車が途中で新品になってるとか気づかなかったよー。レイラを避けた理由はやましさからだったのか!?
ただ、手紙が突然届かなくなってしまった謎は郵便配達がからんでいるような感じでしたよね。まさか毎回彼が偽手紙を書いていたとは思えないけれど(ラストに明らかになる真実もあるし)。てか、レイラ以前はどうしてたのでしょうか。
そもそも手紙はもともとあまりきていなかったという可能性も!?でも牧師のほうも盲目とはいえ、何をどこまで気づいていたのかってのは分からないですよね。
レイラ、牧師、郵便配達が三者三様に牽制し合っていたと思うと、この映画かなり面白い。
*
あと、この作品、劇場で販売されていたパンフがなかなかユニークでした。
便せんに入っていたんですけど、パンフ本体が冊子ではなく、中にはバラのポストカードが入っていて、表に映画のシーンの写真、裏にパンフの記事が書いてあるという、ちょっと凝った作り。しかも、監督からのメッセージは便せんに手書き文字(フィンランド語)を印刷したものが入っていて、監督から観客に向けての「手紙」という形になっていました。
映画のパンフってどれもこれも似た構成ですけど、こういうちょっとこだわりのパンフに出会えるとなんか嬉しいですよね。
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コメント
去年授業で見ました。これをもとに「フィンランド性(的)」(suomalaisuus)とは何かを話し合うって授業。
口に出さないでも伝わるものに対する肯定的なイメージは日本もフィンランドも共通してあると思います(だから伝わらないことははっきりと言わなきゃいけないってのが違う気がするけど)。
映画では3者3様(正確には4者)に言葉に出さないものがあって、傍から見ているともどかしいばかりですが、我々のコミュニケーションの場面も往々にして同じようなことの繰り返しだなーと実感させられます。
ちなみに、フィンランド語でコミュニケーションはviestintäで、viesti(メッセージ)の派生語なところが興味深いところ。
白樺の森がフィンランドっぽい!!!
投稿: とも | 2011年2月25日 (金) 00時10分
>ともさん
遠いところからコメントどうもありがとう~。
そういう授業で使うくらいに
典型的なフィンランド像が見られる作品なのだね。
牧師さんとレイラの関係は終始もどかしかったねぇ。
見ているときにはそれほど気にしなかったんだけど、
郵便配達夫が実はかなり裏がある人物っぽいことを読んで
なかなか奥深い作品だなぁと後から感心してました。
フィンランド映画、春にもあるみたいなので、
そっちも観てsuomalaisuusに関して理解を深めときます!!
投稿: ANDRE | 2011年2月25日 (金) 01時10分