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2011年3月 4日 (金)

映画「ゴールデンスランバー」

ゴールデンスランバー [Blu-ray]

ゴールデンスランバー

日本

2010

2010年1月公開

DVD鑑賞

ネタバレを極力排除するため、原作が文庫化されるまで映画は観ないと決めて、劇場公開中にあれほど流れていた予告編をできる限り観ないようにしていたのですが、無事原作を読み終えたので、映画版も観てみました。

小説を読み終えたときには、小説として映画的なエンタメ作品として完成されていたので、あえて映像化する必要はないようにも感じたのですが、過去に「アヒルと鴨」を驚くほどに素晴らしく映画化してくれた中村監督なので、こちらの期待も高まります。

仙台で宅配の仕事をしている青柳雅春(堺雅人)はあるとき大学時代の友人の森田(吉岡秀隆)に呼び出される。街が首相の凱旋パレードでにぎわう中、森田は青柳に衝撃的な告白をし、やがて彼らのすぐ後ろの大通りで首相が暗殺される。

その後、首相暗殺の容疑をかけられた青柳は逃亡し始めるのだが・・・

「あー、とてもきれいにまとめて映像化したなぁ」、というのが観終えて一番の感想でした。

原作にあった近未来的な設定は全て排除されて、余計な説明を入れずにすっきりとした物語にまとめていたように思います。原作ではその部分がクライマックスで割と重要な役割を果たしていたけれど、そこもとてもうまく処理していて、原作と変えた部分による違和感はほとんどなかったですね~。

原作からカットしてしまった部分では、痴漢のエピソードはあったほうが、青柳の世間のイメージが崩れていく感じが強調されて良かったかなぁと思うんですが、いかがでしょうか。

原作と映画を両方観ている知人が映画ではノスタルジックな部分を上手く抽出しているというようなことを言っていたのですが、原作ではそれほど印象に残らなかった大学時代のエピソードが映画では本当にうまく使われていて、そのおかげで、信頼や絆という作品のテーマがストレートにまっすぐ伝わってきていたように思います。そのせいか原作と映画とでは涙腺が緩む場面が違ったのもちょっと面白かったです。この空気を出せるのであれば、中村監督に「砂漠」を映画化してもらいたいなぁと思ってみたり。

この作品、原作の表紙に英語で「A Memory」って書いてあるんですけど、映画はまさに「A Memory」がタイトルになっていても全然OKな仕上がりだったように思います。

逃亡劇なんだけれど、ここで描きたいのは、信頼と絆であって、事件の真相は原作以上に明らかにならないけれど、花火の場面とか、捨てられてる車の場面とかがいちいち泣かせるんですよねぇ。

ここからはキャストの話を。

キルオの濱田くん、期待を裏切らない活躍でしたね~。金八先生に出ていたときからずっと注目しているのですが(金八先生での彼は歴代生徒の中でも屈指の演技力で見せてくれました)、本当に味のある良い役者だなぁと思います。

で、結構誉めておきながらアレなんですが、主要登場人物のキャスティングは決して上手くないと思うんですよねぇ。てか、彼ら30歳くらいの設定じゃなかったっけ??竹内結子が自分と1つ違いだからってのもあるんですが、いくらなんでも堺雅人や吉岡秀隆と大学で一緒ってのは無理があるのでは・・・とか思ってしまって。

全体にもうちょい若目のキャスティングのほうが良いんじゃないかと思うんですよねぇ。と言いつつ、上述のノスタルジックな雰囲気はキャスト陣の実年齢が高いことによってちょっと強調されてたようにも思うんですが。ぱっと見、学生と区別つかないような感じの人がやるよりも、社会経験を積んでる感じを出すには30代後半の俳優さんのほうが良いのかなぁ。

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コメント

あれだけの小説を、よくここまで巧く映像化したなぁ、と思う作品でした。
この監督はいつもながら、取捨選択が巧いですね。
小説のテーマを熟知した上で、どう表現すると効果的なのか、よくわかってるんだなぁ、といつも嬉しくなります。
これで、暫くは伊坂作品の映画化はお休みと言ってましたが、中村監督なら、『砂漠』を観てみたいですねぇ。
ただし、これ以上にキャスティングが難しい気もしますが。
西嶋くんなんて、誰なら似合うのか…
わたし、頭の中で勝手にフィリップ・シーモア・ホフマンを若くして読んでましたから(笑)

せっかくストーリーは巧く纏まってたのに、どうしてキャストのイメージがここまで違うのか、と思ったんですが、
わが息子の考察というか推測はともかく、青柳と同級生たちはいろんな力関係で決められたのかな、と。
それにしても、竹内結子って若かったんですね。

投稿: 悠雅 | 2011年3月 6日 (日) 14時42分

>悠雅さん

こんにちは。

中村監督は伊坂作品を本当によく分かっていますよね。
原作ファンがここまで納得する映画を作る監督というのは
なかなかいないと思います。

フィリップ・シーモア・ホフマンって、
もはや人種が違いますよ(笑)
でも西嶋役はキャスティングが難しいですねぇ。

キャスティング関係は
大人の事情も色々ありそうですから
こちらが望む完璧なキャストというのを
実現させるのは俳優本人が望んだとしても
難しいところも多いのでしょうね。

竹内結子は朝ドラのときも同級生の相手役が藤木直人でしたが、
この2人も結構年齢差があることに今さら気づきました。
同年代よりかは年上の雰囲気は確かに感じられると思います。

投稿: ANDRE | 2011年3月 8日 (火) 15時39分

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受信: 2011年3月 6日 (日) 14時15分

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