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2011年5月21日 (土)

映画「塔の上のラプンツェル」

塔の上のラプンツェル オリジナル・サウンドトラック

tangled

アメリカ

2010

2011年3月公開

劇場鑑賞

ディズニー好き、そして、グリム好き(さらに「ラプンツェル」1,2位を争うくらいに好き)には見逃すことのできない1本。

自分がインターネットを使い始めて間もないころにディズニーの新作の噂を英語圏のサイトで頻繁にチェックしていて、その時に「ラプンツェル」がリストにあがっているのを見て狂喜乱舞したのですが、それから10年以上の月日を経て、ついに、ついに、ついに、作品を見ることができそれだけでも大興奮なんですが、アラン・メンケンの音楽でミュージカルときた日には、盆と正月が同時にやってきたようなお祭り騒ぎなテンションで劇場鑑賞してきました。

ちなみに当時の予定ラインナップにはドン・キホーテなんかもあったんですが、そちらはいつの間にやら流れてしまったみたいですね。

現在絶賛ほぼ2ヶ月遅れにレビュー中なので、鑑賞は3月末。震災後初の映画鑑賞で、上映中にも何度か揺れてましたが中断することもなく無事最後まで鑑賞できました。(上映前に、万が一の時は途中で上映を止めるという注意があった。)

それでは、ストーリーの紹介から

マダム・ゴーテルは不老不死の秘薬である不思議な花の力で永遠の若さを保っていた。しかし、あるとき病気になったお妃様を救うためにその花がつまれてしまう。やがて、その後生まれた姫ラプンツェルに花の持つ不思議な力が宿っていることに気付いたマダム・ゴーテルは生まれたばかりの姫を連れ去ってしまい・・・。

それから18年後。

高い塔の上で外の世界を知らずに育ったラプンツェルは毎年自分の誕生日に空に見える不思議な光の正体を知るために外の世界へと行きたがっていた。

そんな折、彼女の暮らす塔に、王宮からティアラを盗み逃走中の大泥棒フリン・ライダーが迷い込んできて・・・。

グリム好きからしてみれば、「こんなのラプンツェルじゃねー!!」な気持ちでいっぱいですが、ディズニー好きからしてみれば、「待ってました童話系ミュージカル作品!」ってことでとーっても嬉しく、最終的にディズニーへの愛のほうが勝った為に満足度の高い1本でした。

3Dはあんまし好きじゃないんですけど、この作品のランタンの場面での3Dの使い方は本当に素晴らしくて、自分が本当にランタンの中にいるような気持ちになったのですが、「奥行き」の表現ではなくて「浮き上がらせる」表現を使った演出も心憎くて、「プリンセスと魔法のキス」みたいな2Dアニメの絵画的な美しさを愛する自分でも、このあまりの美しさにはため息が出てしまいました。こればっかりは映画館の大画面の3Dじゃなく味わえないですよねぇ。

グリムに喧嘩を売っているようにも思えるストーリーのほうも、ラプンツェル自身が悪役であるのことを母親として完全に信頼しているというのが新しいパターンになっていて、そのせいで、善と悪の対立にちょっとした複雑さが加わっていて、全て知っている我々観客のほうが変に心配をする場面が多かったですよね。

彼女、自分が必要だったこともあって、ラプンツェルをとても大切に育ていて、基本的に彼女の望むものも全て与えているんですよね。ラプンツェルの側も完全に彼女を信頼しているというのが、なんだかとても切なく、彼女が全てを知る瞬間に感じる恐ろしさは計り知れなったのではないかと。(この「気づき」の場面、もうちょい説得力があると良かったんだけどね。)

お気に入りの場面は上述のランタンの場面と、やっつけ仕事的に適当に歌を歌うラプンツェルの場面、あと、初めての外出でやたらめったら浮き沈みが激しいところですかねぇ。ラプンツェル、近くにいたらちょっと厄介だけど、ディズニーの姫としてはなかなかに個性的な子だったと思います。

動物キャラはいつもどおりに可愛くて、カメレオンのぬいぐるみが売ってたらうっかり買ってしまいそうです(笑)。そして、何気に馬が大活躍。

いや~、00年代に入り混迷を極めたディズニー映画が、「魔法にかけられて」と「プリンセスと魔法のキス」を経て、ついに古き良きディズニーに戻ってきた記念すべき作品と言っても過言ではないですね。(ちなみに「魔法にかけられて」では公園のシーンでステージにて「ラプンツェル」の劇が上演されているんですよ~。←マニアックなディズニー豆知識)

以下、ディズニー好きによる熱い感想に移りますのでご注意を。

* * *

■ストーリー

なんといっても特筆すべきは、ディズニーがかなり久々に魔法を肯定したということ。

このところはすっかり「夢は自分の力で叶えるもの」というスタンスを貫き続けていて、プリンセスもの映画「魔法にかけられて」や「プリンセスと魔法のキス」なんかも魔法は存在するけれど、それだけでは奇跡は起きないし、幸せにはなれず、自分の力で道を切り拓くことの大切さを描いていましたが、今回のラストは「美女と野獣」並に御都合主義(別に悪い意味ではなく)な「奇跡」が起こるラスト。

あと、これまたこのところの作品ではすっかりおなじみだった「アイデンティティの発見」みたいなテーマもなくて、ストレートに童話を描いてくれたのも、ある意味新鮮。

やっぱりディズニーには「夢と魔法」が似合うと思うので、今後もガンガン奇跡を描いていって欲しいなぁ。

この映画、50作記念ということもあり、30作目記念として力を入れて作った「美女と野獣」同様、第3の黄金期の幕開けとなってくれることを期待したいし、その期待に十分こたえられるだけの内容だっとは思うのですが、どうしても言いたいことがあるのです。

この映画の最大の失敗は、

男子に媚を売りすぎたこと

であると思うのです。これは、アメリカで割と公開が近くなってからタイトルを「ラプンツェル」から「Tangled」に変更したことにも表れています。

(しかしながら、日本上映版は英語タイトルも「Rapunzel」になっているという、「ノートルダムの鐘」と同じ現象が。DVD化されたときも、日本版と北米版とで英語のタイトル表記が違うんだろうなぁ。ちなみに昨年BSで放送された「ノートルダム」は、なんとなんと、タイトルが北米版の「Hankback of ---」で表記されたものが放送されていて、ひっそりとかなりレアな放送でした。)

で、フリンのキャラを制作途中でかなりメインに格上げしたんだろうなぁというのも感じられたし、ならず者達をやたらと盛り上げた部分も妙にテンションが高くて不自然だったように思うんですよね。妙にアクションシーンが派手だったし。

北米版の予告を見ると、いつの頃からか、主役がラプンツェルではなく、フリンであるかのような作りになっていて、男の子の観客に媚を売りまくりなのが非常に強く感じられてしまったのがちょい残念。

ならず者達の活躍もちょいと取ってつけた感があって、悪人たちが味方になるという、ある意味「夢と魔法」がいっぱいの展開も、彼らが王の圧政に苦しめられているとかそういう背景がないと、ちょっとどうなのかなと思わなくもなかったです。

本当に良い作品であれば、「美女と野獣」のように老若男女を問わずに感動を与えられるし、ヒットすると思うのですが、ディズニーさんが欲に目をくらませて、ちょっと迷走してしまったのが本当に悔やまれます。

あと、長髪の理由はなかなか上手いなぁと思ったけれど、グリムさんのためにもせめて本家「ラプンツェル」は植物だけでも出してあげてー。てか、映画の設定だと、彼女の名前の由来が謎になってしまうYO!

 

■歌の話

この映画で一番楽しみだったのは、アラン・メンケン作曲による楽曲。

「魔法にかけられて」があったとは言え、ディズニー長編アニメの作曲を手掛けるのは、残念ながら近年のデズニーで唯一日本未公開扱いにされてしまったために、圧倒的な知名度の低さを誇っている隠れた名作「ホーム・オン・ザ・レンジ」以来です。

うーん、やっぱりアラン・メンケンの音楽は良い!これにつきます。

しかし、とっても残念だったのは、アラン・メンケンの真骨頂とも言える、群像劇スタイルでプロローグを歌で語らせるという手法が今回は使われなかったこと。「美女と野獣」や「ノートルダム」、ディズニーではないけど「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」や「クリスマス・キャロル」などメンケンのミュージカルはこの手法が本当に巧い作品が多いのですよ。

もう1つメンケンがとても良い曲を書くのは悪役の曲。今回の「Mother knows best」は、2度歌われるんですけど、それぞれに意味合いとアレンジが異なっているというなかなかの力作。1度目のほうは「ノートルダム」の「Out There」の冒頭を彷彿とさせる作りで、2度目のブラックなほうは「リトル・マーメイド」の悪役曲とちょっと雰囲気が近かったですね~。

そして今回1番の目玉曲はやっぱり「I see the light」。ランタンの場面の映像の素晴らしさがこの曲によってさらに強く感じられる名曲だとは思うのだけれど、「Beauty and the Beast」や「A Whole New World」に比べるとちょっとインパクトにかけるのは否めなくて、アカデミー賞を逃したのも仕方ないかなぁと。いや、好きか嫌いかで言えば大好きな曲ですけど。むしろ、サントラ聴きこんで、既に歌えますけど。

あとは主題歌のグレイス・ポッターは「アリス・イン・ワンダーランド」に起用されてましたよね~。ディズニーのお気に入りなんですかねぇ。

メンケンさんはミュージカル部分ではないBGMのオケ曲も良いので、サントラもお得感があってついつい聞いてしまうのはいつもと一緒。

■その他いろいろ

フリンは王子様がカッコ悪いことの多いディズニーにしては珍しく外見が今風でカッコイイですよね。ザッカリー・リーヴァイは歌も頑張ってて、なかなか良かったと思います。

ラプンツェルは「歌」がキーとなるキャラなだけあって、歌手であるマンディ・ムーアを起用したのはなかなか良かったのではないかと思います。ミュージカルシーンと言うほどでもなくストーリーの流れで歌う場面も安心感がありました!てか、マンディ・ムーア自体が久々に名前を聞いたなぁという感じで自分の中では懐かしのあの人状態でした。

今回、ディズニー好き的に嬉しいのはグレン・キーンが製作総指揮に入ってること。90年代の黄金期を支えた名アニメーターですからね~。

自分としては立体的なタッチのCGよりも2Dの手描きのアニメのほうが絵画的な美しさを味わえて好きなので、前作「プリンセスと魔法のキス」での2D復活はとても嬉しかったのですが、今後のディズニーはどちらの方向に向かうのでしょうか。

僕の勘では近い将来、ディズニーランドでランタン祭的なイベントが行われるのではないかと思うんですけど、どうですかねぇ。シーでやったら綺麗なんじゃないかなぁ。

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コメント

こんばんは。
お忙しい毎日だから、いつUPされるかな、と思ってたら、その思いの丈が文章量に比例したみたいな、熱の篭った言葉の数々。
やはりお待ちしててよかったわ。

震災翌日、全く被害もなかったのに、震えてどうしようもないままの気持ちで、
「それでもわたしたちは落ち着いて普通の生活をしなくては」と思いながら、映画館に観に行った作品でした。
内容、3Dと繊細で美しい映像、音楽、どれもいろいろ語ることができるんですが、長くなりすぎるので(笑)
普段なら、基本的には吹替えで観れないことをぶつぶつ言うんですが、
今回に限っては、1度生の舞台で観て、
繊細そうな見た目も演技も、伸びやかな歌声もとてもよかった舞台俳優さんが、フリンの声を吹替えるというので、とても楽しみに吹替え版を観たのでした。
そうそう。
イチハラヒロコさんというアーティストが「挿絵」を入れた『ラプンツェル。』という原作の本、
ある意味、滅茶苦茶面白いです。

投稿: 悠雅 | 2011年5月24日 (火) 00時07分

>悠雅さん

お返事すっかり遅くなってしまい
大変申し訳ありません。

10年以上待ち続けていた作品が公開になったこともあり
かなりテンションが上がってしまい
妙に熱のこもった記事になってしまいました。

震災後、観に行こうかどうか何度も悩みつつ、
思いきって観に行ったという点でも
生涯忘れがたい1本になると思います。
被災地の子供たちがこういう作品を
笑顔で楽しめる日が1日でも早く訪れることを
祈らずにはいられません。

この作品は、吹き替え版も結構評判が良いですよね。
DVDが出たら購入するのは確実ですので、
そのときに吹き替え版も観てみようと思います。

イチハラヒロコさんの「ラプンツェル」、
実は悠雅さんの書かれた記事をみてちょっと気になってました。
こちらもどこかで機会があったら手に取ってみたいと思います!

投稿: ANDRE | 2011年5月29日 (日) 23時55分

はじめまして♪昨日、念願のこの作品のDVDをレンタルで;見て、興奮冷めやらぬままブログを検索し、こちらに辿り着いたものです~(^-^)。
1つ1つうなずきながら読ませていただきました^^。フリンや悪党陣の扱いについても成る程、と思わされました。私は、ドラマの‘CHUCK’を見て以来、ザッカリー・リーヴァイのファンなので、映画としてはとても満足ですが、エンディングのイラストで描かれていたフリンのイメージよりずっと、役者さんにイメージが寄せられているなあ~、と感じた(※一方のマンディ・ムーアはむしろ、18才のラプンツェルになりきって役作りをしていたのと対照的に...)理由が分かった気がします。
また劇場で再上映してくれたらぜひ、スクリーンで観たいです!o(*^▽^*)o

投稿: ハッピーエンド好き♪ | 2011年7月23日 (土) 23時15分

>ハッピーエンド好き♪さん

はじめまして。コメントどうもありがとうございます。

ディズニー映画ファンとしてはとても嬉しいことの多い作品で、
「興奮冷めやらぬまま」というお気持ちもよく分かります!!
そして、スクリーンで見られる機会があれば
是非スクリーンで観てみてください!
普段はあまり3Dが好きではないのですが、
この作品に限って言えば、是非3Dで!
ランタンの場面の美しさは言葉にできないくらいです。

投稿: ANDRE | 2011年7月24日 (日) 23時49分

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