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2011年7月 4日 (月)

トーマス・マン「トーニオ・クレーガ 他一編」

トーニオ・クレーガー 他一篇 (河出文庫)

トーニオ・クレーガー 他一編
(Tonio Kröger/ Mario und der Zauberer)

トーマス・マン
(Thomas Mann)

河出書房新社 2010. 10.

堅実な市民であるドイツ人の父と芸術的なイタリア人の母をもつ文学を愛する少年トーニオ・クレーガーはギムナジウムの同級生ハンスに好意を寄せていたが、彼と話をするうちに芸術的な気質を持たないハンスと自分とが相容れないことを思い知らされる。

それから数年後、トーニオは同じダンス教室に通う少女インゲに恋をする。しかし、またしても、彼女と自分との違いを痛感することとなる。

やがて大人になったトーニオは作家となるのだが、画家のリヴェベータはトーニオの気質が芸術的ではないことを指摘して・・・。

率直な感想としては、「市井の人間とか芸術的とかどーでもいいじゃん!!」といったところでしょうか。そんなこと考えすぎるからダメなんだよー。と思ってしまう僕はきっと平々凡々な一般市民なのでしょう。

主人公の少年時代のエピソードは2つともかなり好き。単独で短編になっていたら間違いなく相当な勢いでハマっていたのではないかと思います。

中盤の芸術論は面白いのだけれど、後半にかけて主人公がやっぱり悩みすぎなところがあまりお好みではなく、そんなに大げさに話を広げてなくても・・・とか思ってしまったのでした。

で、どっちかというと「他一編」というちょい寂しい扱いをされている「マーリオと魔術師」のほうがお話としては好きでした。

舞台はイタリアの海辺のリゾート地。ドイツ人の家族がチポッラという魔術師の男のショーを訪れ、そこで人々が次第にチポッラに扇動されていく光景を目の当たりにして・・・

こういう心理学的な要素のある話は結構好きなのです。自分の勝手なイメージでだけど、ドイツっぽさを感じられるよね。「es」とか「Wave」とかの感じで映画化しても面白そう。

ラスト、あれよあれよと言う間に衝撃的な幕の閉じ方をするのだけれど、「あれでおしまいなの?」っていう子供たちの台詞が微妙にシュール。結構な事件が起こっているのに冷静すぎだよぅ。

1930年に書かれた作品と言うことですが、現代に生きる我々はその後のドイツのたどる道を知っているだけに、マンの視点の鋭さが余計に際立って感じられたように思います。

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コメント

そうなんですよ。大げさなんですよね、トーニオってやつは。詩を書くなんて最低の人間のすることみたいなことを言いながら、一般人が詩を書くことを容認しないあたりは結構傲慢でもあります。

私も「マーリオ」のほうが面白かったですね。ファシズムにNOというはっきりした作家の意思表明でもあり、興味深い作品だと思います。

投稿: piaa | 2011年7月31日 (日) 23時32分

>piaaさん

お久しぶりです。
コメントどうもありがとうございます。

変に芸術家ぶったプライドの高さのようなものが感じられて
悩んでること自体に共感ができないので、
自分も名作とは言えそれほど面白く感じられませんでした。

「マーリオ」は面白かったですね~。
「他一編」という扱いなのがもったいないです。

投稿: ANDRE | 2011年8月 3日 (水) 23時58分

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