« 舞台「CHESS in Concert チェス・イン・コンサート」 | トップページ | 映画「ダーク・フェアリー」 »

2012年2月20日 (月)

「楽器たちの図書館」 キム・ジョンヒュク

楽器たちの図書館 (新しい韓国の文学)

楽器たちの図書館

キム・ジョンヒュク

クオン 2011.11.

(original 1911-1947)

書店で見かけてタイトルと装丁にひかれて読んでみました。完全に「ジャケ買い」でしたが、これはなかなかの当たり。

音楽や芸術をテーマに8作を収録した短編集なのですが、日常の中でちょっとだけ不思議なできごとが起こって、どこか世間とはテンポの異なる登場人物たちがちょっとだけ前へ進む感じがなんとなく吉田篤弘氏の小説にも似た雰囲気で、結構好きな1冊となりました。

全体にどこか乾いたような冷めた視点で描かれていているのも特徴的。ちょっと理屈っぽすぎるかなぁという印象もありますが、登場人物も、小物も、エピソードのアイデアも抜群のセンスの良さが光ってます。この人の書く長編があったら読んでみたい。

以下、各作品に一言感想。特に好きだった作品には★をつけてます。

・「自動ピアノ」

一本のドキュメンタリーを見て、人生が変わってしまったピアニストの話。音楽とは何なのか、ということを考えさせられる物語で趣味ではあるけれど音楽をしているので、とても面白かったです。

・「マニュアル・ジェネレーション」★

マニュアルばかりを集めた雑誌を作る男の話。この作品を読んで、「あ、吉田篤弘っぽい」と思いました。この作品は他にも「地球村プレイヤー」などセンスの良さが光って結構好きです。

・「ビニール狂時代」

不思議なレコード収集家と出会ったDJの話。これはちょっと怖かったけれど最後の終わり方が爽やかだったのが救いでした。「DJ」という仕事の意義を問いかけるような作品でなかなか面白いです。

・「楽器たちの図書館」★

タイトルのまま、楽器の音を集めた図書館を作る話。ただ、それがオチなので、ちょっともったいないというか、もう少し先まで読みたいというか。これもアイデアが良いですよね。

・「ガラスの盾」★

いつも2人で1人の大親友同士が、ふとしたきっかけでアーティストとなるお話。スピード感のあるテンポの良い青春物語で、短い中に様々な要素が詰まっていて、とっても面白かったです。この作品を読めただけでもこの本を読んで良かったと思います。ちょっとほろ苦くも前へと進んでいくラストも良い。

・「僕とB」

太陽アレルギーの青年とギター弾きの話。この本の中では地味な印象だったけど、ちょっとキザだけど心に残るセリフの多い作品。

・「無方向バス」★

失踪した母の行方を探す物語。他の作家の短編の冒頭とラストの文をそのまま使った「リミックス」作品らしく、なかなか面白い試みなのですが、オリジナルを知らないのでその辺の面白さはよく分からず。ただ、「無方向バス」というアイデアがやっぱりとても良いです。ちょっと切ないけど、喪失感だけで終わらせない温かさが良いです。

・「拍子っぱずれのD」

いつもみんなとリズムがずれてしまう男の話。合唱がモチーフとして出てくるのが嬉しい。

 

韓国の文学作品を読むのはこれが初ですが、なかなか面白かったので、「新しい韓国の文学」というこのシリーズを追いかけてみようかな。ちなみに、この本、装丁もとても良くて、それもこのシリーズを追いかけたいと思わせてくれる要素の1つになってます。

|

« 舞台「CHESS in Concert チェス・イン・コンサート」 | トップページ | 映画「ダーク・フェアリー」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/145222/53969109

この記事へのトラックバック一覧です: 「楽器たちの図書館」 キム・ジョンヒュク:

« 舞台「CHESS in Concert チェス・イン・コンサート」 | トップページ | 映画「ダーク・フェアリー」 »