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2012年3月 4日 (日)

映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い [DVD]

extremely loud & incredibly close

アメリカ

2011

2012年2月公開

劇場鑑賞

書店で原作を見かけたときから気になっていた作品が映画化され、それがスティーヴン・ダルドリー監督とあったら見ないわけにはいきません。

主人公の少年オスカーは、大好きな父(トム・ハンクス)と共にNYの街全体を使ったゲームをして楽しんでいた。コミュニケーションが苦手な息子のため父は、「調査探検ゲーム」と称し、オスカーが街で見知らぬ他人に聞き込みをしながら答えにたどり着けるよう様々な問題を出していた。

しかしそんな父は911のテロで帰らぬ人となってしまう。

深い悲しみの中、オスカーは父のクローゼットの花瓶の中から鍵と「ブラック」と書かれた紙を発見する。これは一体どこの鍵なのか、父が残した最後の問題に答えるため、オスカーはNYに暮らす472人の「ブラック」という名の人物を訪ね始めるのだが・・・

いやー、ダルドリー監督、ハズレなしです!今回は、「リトル・ダンサー」のように主人公の少年の複雑な感情を丁寧に描き、「めぐりあう時間たち」「愛を読むひと」のように時間軸を越えた物語を流れるように見事に演出し、これまでの集大成のように感じました。ちょっと余談ですが、ダルドリー監督は「リトル・ダンサー」舞台版の演出でトニー賞を受賞しているんですよね~。今一番観たいミュージカルです。

原作が「911文学の金字塔」なんて呼ばれているのは知っていたのですが、事前にどのような内容なのかほとんど情報を入れずに鑑賞をしたので、新鮮な気持ちで観ることができ、それだけに感動が大きかったように思います。

てか、全編にわたって涙腺ゆるみポイントが散りばめられていて、終始ウルウルでした。

特に涙腺崩壊状態となったのは3か所。

①911の事件の場面

なんかあの事件をテレビで見た日のことを思い出し、その後のことを知っているだけに、何気なく帰宅して留守電を聞くオスカーの姿を見るのが非常につらかったです。

②オスカーが母を罵る場面

この映画、父に対して母が割と地味に描かれていたんですが、愛する夫を亡くして自分も大きなショックを受けているところに、オスカーが心無い言葉を投げてしまう場面で、その言葉は母にはあまりにもきついのではないかと思い、ただひたすらに苦しくなってしまいました。そして、その後で家を出たオスカーがドアの前で声をかける場面ももうボロボロ。

③ラストの母の真実

これ、もうボロ泣きでした。正直、その前のシーンまで、母親があまりに地味な役割でサンドラ・ブロックを起用する意味もないように思っていただけに、ガツーンとやられちゃいました。

両親の愛に温かく包まれたオスカー少年がこの先、不条理極まりない大きな悲しみを乗り越えて前を向いて生きていくことが感じられる作品で、911がテーマではあるけれど、震災後の今、この作品の投げかけるテーマの普遍性が見事に心に響いてきましたね~。

「ブラック」さん探しの場面はとても微笑ましくて、ちょいちょい駆け足になってしまった部分もすべてフルで観たいと思ってしまいました。原作だとこの辺、もうちょっとしっかりと描かれているのかなぁ。そして、この流れで登場するマックス・フォンシドー演じる老人がとっても良かった!キャラクター設定の良さもさることながら、フォンシドー氏の存在感が素晴らしくて、オスカー候補も納得。「人生はビギナーズ」のクリストファー・プラマーも良かったけれど、自分的にはフォンシドー氏のほうに軍配が上がるかなぁ。

タイトルの「ものすごくうるさくて」は映画内で少年が音に敏感になるのを我々自身が体験できるように演出されていて、鑑賞しながら実際にそれを感じられたのだけれど、「ありえないほど近い」ものは一体何だったのでしょう。近すぎて気がつくことが難しい「愛」なのかなとも思うのだけれど、そうすると、「ものすごくうるさくて」も愛の強さを表しているように感じられますよね。

この映画、鑑賞後もジワジワと感動が続いて、駅の構内でふと見かけたポスターで思いだし感動をしてしまいうっかり涙腺が緩みそうになったりと、なかなか危険なのですが、良い映画を観ることができて大満足でした。

最後に、チケットを買うとき、「あり得ないほどうるさくて」と言いそうになるのを事前にモゴモゴと練習して頑張って「ものすごく」と言ったのは僕だけではないハズ。映画館の人もタイトルを「ものすごく」って省略して呼んでたよ・・・。

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コメント

はじめましてー(⌒▽⌒)♪
わたしも先日この映画を観て涙腺崩壊した者です!
すごく良かったですよね☆

オスカー役の子もアスペルガー症候群の疑いありという難しい役を見事に演じきっていて、感動しました(T_T)

投稿: まい | 2012年3月 5日 (月) 19時11分

こんばんは。
わはは!やっぱり、チケットカウンターでタイトルをもごもご・・・状態になっちゃう人、多いですね。
わたしも「ものすごくうるさくて」で、チケットくれました(笑)
映画館スタッフの略称は「ものあり」だと聞きましたが、何も無理しなくても、と思う縮め方。。。

フォン・シドー、よかったですねぇ。オスカー、差し上げたかったです。
この方にしても、それぞれのキャストも、オスカー俳優やノミニーだらけ。
派手さはないけど堅実に作られたという印象で、
話題作が目白押しの現在、(この先は全く予想できませんが)
『ヒューゴ』より『戦火の馬』より、わたしはこの作品が好きでした。

投稿: 悠雅 | 2012年3月 6日 (火) 00時39分

>まいさん

はじめまして!
コメントどうもありがとうございます!

鑑賞前はここまでの感動作だとは思っていなかったので、
ガツーンとやられてしまいました。
子役も本当に上手かったですね~。
ダルドリー監督は「リトルダンサー」の子役も良かったですし、
良い子役を使ってその良さを最大限に引き出すように思います。

***

>悠雅さん

コメントどうもありがとうございます。
なんとか再びブログのペースを戻しつつあります。

自分がチケットを買ったところでは、
「ものす」くらいまで言ったら、
練習の成果を発揮するまでもなく
「ものすごく、ですね~」とチケットカウンターの人に言われてしまいました。
さすがにお客さんに「ものあり、ですね」とは言えないですよね(笑)

フォン・シドーが登場してからはずっと彼に釘づけでした。
哀しみのある可愛さ、オスカーを見つめる温かさなど
本当に素晴らしかったので受賞できなかったのがとっても残念です。

「ヒューゴ」とだったら自分も断然こちらの作品のほうが好きです。
今年の作品賞は面白そうな作品がずらりと並んでいたので、
他の作品も是非観ていきたいです。

投稿: ANDRE | 2012年3月 7日 (水) 00時36分

ANDREさん、お久しぶりです。
コメント残してくださって、ありがとうございました。
私もこの「泣きポイント」で涙が・・・。

911という難しいテーマをこういう角度からドラマにして振り返る、押しつけがましくなく、非常にうまいなぁ~と心揺さぶられました。
アメリカでの評価は低かったですね。どうしてなんでしょう?

映画館の電光掲示板は文字数が足りなくて「ものすごくうるさくて ありえない」でブチ切れてました。これはこれで文章として成り立っていて、笑っちゃいました。

「リトルダンサー」のミュージカルがあるんですか?!
この映画は大好きです。ダルドリー監督は子供の才能を引き出すのが得意な方ですね。ジェイミー・ベル君の踊り、素晴らしかったです。もう踊ってくれないんでしょうか?

投稿: ryoko | 2012年3月 9日 (金) 01時15分

>ryokoさん

旅行をしていたため、御返事が遅くなってしまいました。
この泣きポイントは思い出すだけでもポロポロときてしまいそうで
本当に危険です。

長いタイトルは色々と大変ですよね~。
電光掲示板、上手い具合に途切れてて面白いです!

リトルダンサーはダルドリー監督自らが演出をして
エルトン・ジョン作曲でミュージカル舞台になっていて、
数年前にトニー賞を総なめにしているのです。
今一番観たいミュージカルです!!

投稿: ANDRE | 2012年3月20日 (火) 00時39分

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