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2012年8月27日 (月)

「灰色の畑と緑の畑」 ウルスラ・ヴェルフェル

灰色の畑と緑の畑 (岩波少年文庫 (565))

灰色の畑と緑の畑
(Die Grauen und die Grünen Felder )

ウルスラ・ヴェルフェル
(Ursula Wölfel)

岩波少年文庫

(original 1970)

貧富の差、差別、戦争、飢餓などの社会問題を題材に世界各地を舞台にして描かれる14の短い物語。

児童書なんですが、大人が読んでも深く考えさせられる一筋縄ではいかない作品でした。

なんといっても問題提起することが目的であるようなことを著者自身が書いている通りに、特に何の解決も示されないままなんとなく後味の悪いまま終わってしまう話も結構多いのです。著者自身が「愉快ではない」と言い切ってますし。

基本的に物語の主人公は子供たちなんだけれど、彼らが世界に潜む暗い問題の存在を知ってしまった瞬間を切り取ったような作品が多くて、登場する大人たちも特に道徳的な対応をするわけではなく、しっかりと現実を描いているので、読んでいて胸をギュッとつかまれるような苦しさを覚えてました。これ、子供のころに読んだら、トラウマみたいになる子もいるんじゃないのかねぇ。

気になったエピソード。

・「お茶の時間」

ラストが怖すぎる・・・。

・「マニのサンダル」

これはマニの親の目線になってしまうと涙が止まらないです。子供が読むよりも大人が読んだ方がショックが大きいと思う。

・「ふたごの魔女」

双子の老婆を描いた作品だけれど、子供の無邪気な悪が引き起こす悲劇が良く描かれていて、何とも言えない気分に。

・「そんな国で」

思想や言論の自由がない国家を描いた話ですが、ラストの「不信、不安、敵対はそういう国では禁じられていない」という一文が強烈。

・「通りを三つ上がる」

これは大人が主人公ですが、社会的身分の格差を越えることの難しさを短い中でとても巧く描いていて、結局帰って行った先に以前の暮らしがあるかどうかも分からないところが非常に切ないです。

 

この作品集を読んで思い出したのが映画「それでも生きる子供たちへ」。ほとんど同じコンセプトの作品ですよね。映画のほうも改めて見返したいなぁ。てか、この映画、DVD欲しい。

映画「それでも生きる子供たちへ」のレビュー

http://andrekun.cocolog-nifty.com/andres_review/2008/05/post_cc61.html

 

 

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