「決壊」平野啓一郎
決壊 平野啓一郎 .新潮文庫 11年5月 |
2011年の5月に文庫が出たときにすぐに買って、しかもすぐに読み始めたにも関わらず、数十ページ読んだ時点で上巻が行方不明になってしまったのを、1年半以上かけて無事発見し、改めて最初から読み始めました。
ネットで匿名の日記を書くサラリーマンと彼に内緒でそのサイトの掲示板の常連として書き込みをするその妻。いじめに苦しむ中学生。そんな彼らのもとに忍び寄る悪魔の影を描く物語。
この作品の感想、結構いろいろなことを考えながら読んでいたのだけれど、もうね、千葉の総武線ユーザーとしてはラストシーンの衝撃が強すぎちゃって、全てそこに持って行かれちゃいました。まさかあんなところであんなことになってしまうとは・・・。
この作品、「最後の変身」や「顔のない裸体たち」でも描いてきたインターネットをからめて現代を生きる人々の心の闇をえぐっていくというテーマが長編としてみごとに結実していたように思います。盛り込みすぎなくらいにいろいろなことを盛り込んでいながら、それが破たんせずにギリギリのところでしっかりと長編としてまとまってたし。
マスコミの描き方なんかが、漫画的というか、あまりにステレオタイプかなという気もしたし、全体にミステリ調に仕立てていて事件の場面なんかもエンタメ小説っぽい雰囲気が強かったので、題材がやたらと重いのに対して、妙な軽さがあるのがときどきちょっと気になりました。
扱っているテーマが多岐にわたるし、ネットで書き物をしている自分にはいろいろと思うところもある箇所も多かったのだけれど、体力的にきついので、このくらいで感想は終わりにしておきますです。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「足音がやってくる」マーガレット・マーヒー(2013.05.30)
- 「SOSの猿」伊坂幸太郎(2013.05.05)
- 「死美人辻馬車」北原尚彦(2013.05.16)
- 「俺の職歴」ミハイル・ゾーシチェンコ(2013.04.01)
- 「エムズワース卿の受難録」ウッドハウス(2013.03.24)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント