「夜な夜な天使は舞い降りる」 パヴェル・ブリッチ
夜な夜な天使は舞い降りる パヴェル・ブリッチ 東宣出版 (original 2011) |
昨年刊行が始まった「はじめて出逢う世界のおはなし」というシリーズの第2弾です。第1弾はフィンランドの作家の作品でカルヴィーノを彷彿とさせるような哲学的なSFだったのですが、第2弾はチェコのファンタジー連作短編。手に取りやすい新書サイズで、2冊とも面白かったので、今後のラインナップにも期待したいです。
さてさて、そんなわけでチェコから届いた不思議な連作短編集です。
夜の教会を舞台に、守護天使たちがワインを片手に、これまで自分が守ってきた人間たちにまつわるエピソードを互いに聞かせあっているという設定で、様々な人間ドラマが語られます。
一話一話が10ページほどの長さで読みやすいのですが、結構深く一人の人生を語るものも多く、天使たちの視点で語られるという設定の面白さもあって、なかなか面白く読むことができました。
酔いどれ天使たちがワイワイやってる感じも良かったです。
とはいえ、やっぱり玉石混合という感じはあって、なんだかよく分からないまま終わってしまうものもあったのですが、収録作品で良いなと思った作品をいくつかあげて、一言コメント。
・「終身クリスマス」
タイトルの言葉がまず面白いのですが、果たしてそれは何を意味するのか、というのが物語の肝になるところ。音楽を題材にした内容で、作者が音楽の持つ力の強さを最大級の賛美と共に語るところが良いです。
・「あるじを裏切った天使」
語り手の天使は双子の1人を担当することになったのだが、もう1人の片割れが天使を魅了する幸福に溢れていたのに対し、自分の担当する少年が彼への劣等感に悩まされていくというお話。タイトルのままなんだけれど、短い中に双子だけでなく天使の葛藤も描かれていて面白い。
・「幸運の子ども」
不老不死を手に入れてしまった少年を描くお話。最後のオチはちょっと反則かなとも思うけれど、奇跡が果たして幸せにつながるのか、人間の怖さや、時事的にタイムリーな恐ろしさも描かれ、とても面白かったです。
・「バッハ」
これも音楽の力の強さを描く作品。ちょっとホームアローンみたいな感じではあるんですが、最後の〆の言葉が結構お気に入りです。
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