映画「偽りなき者」
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Jagten デンマーク 2012 2013年3月公開 劇場鑑賞 |
地味ながらも見応えのある1本です。
ある日、幼稚園で働くルーカスは、勤務先の幼稚園で親友テオの娘クララからキスをされ、ハートの形の贈り物をもらうが、ルーカスはそれを本当に好きな人にあげるようにと優しく注意をする。その日の夕方、落ち込むクララを心配した園長が声をかけると、クララは兄とその友人に見せられたポルノを思い出し、その意味も分からずルーカスがクララに性的な行為を行ったかのようなことをほのめかしてしまう。幼いクララの口から出た言葉は瞬く間に町中へと広がり、優しかった住人達はルーカスを避けるようになっていき・・・。
いやー、これは辛い映画でした。子どもは純真で嘘なんかつかないってのが前提にあるんだろうけど、ブレーキのきかなくなった猜疑心ってのは怖い。てか、クララの兄は自分たちの行為が原因の一端をなしているんだから、ちょっとくらい気づけよ!とか思ってしまいます。
あと、1人でパニックになって騒ぎすぎる園長も、立場を考えてもう少し慎重にものごとを見て欲しかったなぁと。
もう親友ももうちょっと信じてあげてよ!とか。
とにかく一度疑いの目が向けられると、それまでどんなに良好な関係を築いていても、その人物を信じられなくなってしまう怖さがこれでもかってくらいに描かれる作品でした。
自分は絶対にやっていないという確固たる信念が主人公を支えていて、スーパーの場面や犬の場面なんかは観てる側が辛すぎて、あまりの理不尽さに彼がいつきれてしまうのかとヒヤヒヤでした。最終的に爆発してしまうわけだけど、それまでの時間がかなり長かったですよね。しかも彼は爆発しても紳士な感じで、こんなに良い人が追い詰められていったのかと思うと、理不尽さがより際立って感じられました。
クララはこの事件に巻き込まれるにはあまりに幼すぎて、こんな小さな子がウソをつくはずがない、こんな小さな子がそんなこと想像できるはずがない、と言ったことは全て鵜呑みにされる。一方で、真実を語っても、怖かったことを忘れようとしてると慰められる。話が大きくなりすぎて、怖いのに誰も助けてくれないし、真実を共有する彼のところに行っても帰るように言われる。しかし、そんな状況でも彼女は無邪気にはしゃぐことができる。とにかく幼い。
そんな中でも、ルーカスのこと信じてくれる仲間や息子の存在がほっとさせてくれるのだけれど、そんな彼らの助けもあって、一見平和が戻った後に描かれるラストシーンはやっぱり衝撃的でした。物語が単なるハッピーエンドで終わらなかったところが妙に現実的で、このラストのおかげでいつまでも記憶に残る作品になったように思います。
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