「SOSの猿」伊坂幸太郎
SOSの猿 伊坂幸太郎 .中公文庫 2012年11月 |
順調に文庫化が進む伊坂作品ですが、伊坂作品は単行本が出たときにどんな作品なのだろうかとタイトルから色々と想像するのも楽しみだったりします。さて、そんな伊坂作品の中でもちょっと内容が想像しづらかった不思議なタイトルの1冊ですが・・・。
親戚からひきこもりの子どものみてほしいと頼まれた悪魔祓いの青年と、巨額の損害を生んだ株の誤発注事件を調査する男。二人の物語を孫悟空が結びつけていく・・・。
文庫化に至るまで何度か加筆修正はされているのだろうけど、新聞連載だったということで、細かな章立てが生きていてテンポよく読みやすい作品でした。
悪魔祓いの青年の話と株の誤発注の調査員の話が交互に語られるのだけれど、序盤ではこの2つがどのように交差していくのかが全く見えないので、結構ワクワクしながら読み進めることができました。
ただ、この作品、他の伊坂作品と比べてキャラクターのインパクトが薄めで、その割には短い話でもないので、ストーリーの面白さだけで勝負するには、そちらもちょいと地味だったように思われて、満足度はいつもよりかは低めです。
ちょっと不思議な語り口調で話が進んでいくのだけれど、その秘密が後半でしっかりと明らかになってニヤリとさせられるあたりは流石です。そして、そのトリックを上手く使った「信頼のできない語り手」的な展開になったのは面白かったです。
五十嵐大介氏とコラボした作品で、対になるコミックがあるそうなので、そちらの方も機会があれば読んでみたいです。
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