書籍・雑誌

2009年12月24日 (木)

「フィッシュストーリー」 伊坂幸太郎

フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー

伊坂幸太郎

新潮文庫 2009.11.
(original 2007)

映画化したこともあって、文庫化が早かったですね~。この調子で『ゴールデンスランバー』も映画化にあわせて文庫になってくれませんかねぇ。

そんなわけで、すっかりファンな伊坂幸太郎作品です。読むまで長編もしくは連作短編かと思っていたんですが、珍しく独立した作品4本を収録した短編集でした。

どっかでつながるんじゃないかとかかなり期待しちゃったんですが、特にそういう仕掛けもなく・・・。ただ、他作品とのリンクがかなり多かったですね。特に『ラッシュライフ』。伊坂ファンとしてはリンクに気づくとついついニヤリとしてしまいます。

そんなわけで、以下4作品それぞれについて感想を。

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2009年12月22日 (火)

「寄宿生テルレスの混乱」 ムージル

寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)

寄宿生テルレスの混乱
(die verwirrungen des Zöglings Törleß)

ロベルト・ムージル
(Robert Musil)

光文社古典新訳文庫 2008.8.
(original 1908)

古典新訳文庫のドイツもの。ケストナーの『飛ぶ教室』なんかでも御馴染みのギムナジウムを舞台にした作品ということでちょっと面白そうだな、と。

主人公は寄宿学校に入った少年テルレス。仲間達とともに過ごす中、大人の階段をのぼりはじめる彼だったが、あるとき、お金を盗んだ同級生バジーニが仲間達からいじめにあい始め、テルレスもまた彼を前にしたとき、不思議な感覚を覚えてしまう・・・

前半はちょっと退屈な印象だったんですが、バジーニ事件が起こる後半以降、テルレスの激しい混乱っぷりが描かれ始め、結構エンタメしてるテンポの良い展開でなかなか面白い作品でした。

このところ、一人称で書かれた小説を読む機会が非常に多いこともあって、この小説の語り手が、主人公テルレスが自分自身でも気づいていない思いや感情を綴り、さらには、未来の彼がこのことをどのように振り返るのかというようなことまで語られていて、まさに神の視点で、「そこまで彼のことを知ってるあなたは何者!?」な気持にさせてくれる語りが久々でちょっと新鮮な感覚を受けてしまいました。

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2009年12月20日 (日)

「悪魔の涎・追い求める男 他8編」 コルタサル

悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)

悪魔の涎・追い求める男 他8編
(las babas de diablo/ el perseguidor)

フリオ・コルタサル
(Julio Cortazr)

岩波文庫 1992.7.
(original 1956,1959 etc.)

アルゼンチンの作家コルタサルの短編集。なかなか面白いという評判をよく耳にするので、どんなものかと、読んでみました。

収録されているのはタイトルの通りに短編が10本。幻想的な作品が多く、印象としては、マグリットなんかの絵画作品の世界観を小説にしたような感じでした。日常世界のすぐそばに幻想世界が広がっているのを感じさせてくれて、不思議な世界への入口を垣間見るようなゾクゾクとした感じがたまらなかったです。

おぉ、これがマジック・リアリズムか!て感じですかね。(こういうジャンル分けはあまり好きじゃないんだけど)

コルタサルは「石蹴り遊び」も読んでみたいなぁ。てか、集英社文庫が一時期南米文学シリーズを出してたのに、今はすっかり絶版状態。高校~大学入ったばかりくらいの頃に、このシリーズをまとめて買おうかどうか、書店でさんざん迷って、とりあえず見送ってしまったことが非常に悔やまれます。

以下面白かった作品メモ。

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2009年12月13日 (日)

「それからはスープのことばかり考えて暮らした」 吉田篤弘

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

それからは
スープのことばかり
考えて暮らした

吉田篤弘

中公文庫 2009.9.
(original 2006)

吉田篤弘作品、今年は文庫化ラッシュですねぇ。この作品、なんとビックリ、『つむじ風食堂』に続く月舟町シリーズの第2弾なんですね!!!出版社が違うので、そこに関しては、読み始めるまで、完全にノーマークでしたよ。

仕事を辞めて月舟町に引っ越してきた主人公の「僕」ことオーリィは、時間を見つけては映画館<月舟シネマ>へ通い、そこでかかる古い作品を観ていた。近所にあるサンドイッチ屋「トロワ」の常連となった彼は店主の安藤さんやその息子とも親しくなり、やがて、サンドイッチ店を手伝うようになるのだが・・・

最近読んでいた吉田作品は正直、どこか物足りなかったんですが、これは久々にかなり良かったです☆ますます月舟町に住みたくなっちゃいますよ!

連作短編になってるのかと思いきや、結構しっかりと長編だったんですが、まさに「スープ」のような温かさで満ち溢れていて、すぐに読み終えてしまう軽さの中に、ギュギュギュっと人情が詰められた作風はやっぱり大好きです。

出てくる登場人物たちがとにかく愛らしいのに、そこに、映画やらが絡んできたらもうたまらないですよ。

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2009年12月11日 (金)

「ロックンロールミシン2009」 鈴木清剛

ロックンロールミシン2009 (小学館文庫)

ロックンロールミシン2009

鈴木清剛

小学館文庫 2009.1.
(original 1999)

以前『ラジオデイズ』を読んで、三島賞受賞の『ロックンロールミシン』もいつか読もうと思っていたら、今年になって改稿したバージョンが出ているのを書店で発見。丁度良い機会なので読んでみました。

主人公の賢二はそれまで勤めていた会社を辞め、新しい人生を模索していた。そんなとき、高校時代の友人が仲間達と3人でインディーズの服飾ブランドをたちあげる。最初は興味深く彼らの仕事を見ていた賢二だったが、やがて、それを手伝うようになり・・・という物語。

「インディーズ」の良いところも悪いところも描いた作品で、なかなか面白かったです。

ただ、「ラジオデイズ」を読んだときにも思ったんですが、この人の書く文章は、第3者的視点の語りで進んでいたものが突如主人公視点になっていたりする視点の移り変わるタイミングがどうも自分の中でしっくりこなくて、とても読みづらい印象なんですよね。

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2009年12月 9日 (水)

「拳闘士の休息」 トム・ジョーンズ

拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)

拳闘士の休息
(the pugilist at rest)

トム・ジョーンズ
(Thom Jones)

河出文庫 2009.10.
(original 1993)

全く予備知識なしになんとなく面白そうだと思って手に取った1冊。他の翻訳作品もエッセイも面白い岸本佐知子訳だというのが最大の決め手。

アメリカの作家による短編集で、作者自らの経歴がベースになっている作品が多く、ベトナム戦争での経験や、ボクサー、そして、癲癇発作とそれによる不安定な精神状態などが共通して多くの作品に登場します。

作者自身が何度も死の瀬戸際を経験しているからか、肉体的にも精神的にもどんなに過酷な状況にあっても、はいつくばって生きていくような姿が多く描かれていて、彼らの声がとても力強く胸に響いてくるような短編でした。

特に、作者の経験が色濃く反映されていると思われる表題作と女性癌患者を描いた「わたしは生きたい!」はすさまじい声の力を感じる作品だったと思います。「わたし~」の最後なんか、とんでもないインパクト。

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2009年11月22日 (日)

「六白金星・可能性の文学」 織田作之助

六白金星・可能性の文学 他十一篇 (岩波文庫)

六白金星・可能性の文学
他十一篇

織田作之助

岩波文庫 2009.8.
(original 1945-46)

新潮文庫から出ている短編集「夫婦善哉」、角川文庫の長編「青春の逆説」に続き、オダサクを読むのは3冊目。新潮の短編集と被る作品もちらほらとあるんですが、評論「可能性の文学」は読む価値の高い内容だったと思います。

収録されているのは短編9作と評論2作。

既に読んだことのある作品ではあったものの、「アド・バルーン」は何回読んでも本当に面白い作品だと思います。内容も語りも大好きです。

オダサクの醍醐味であると勝手に思っている、軽妙な語り口はやはり読んでいてとても楽しくて、そこに、これまた彼の作品の醍醐味である、運命に翻弄されながら生きていく人々の物語に引き込まれてしまいましたね。

以下、収録作品で今回初めて読んだ作品ごとにコメントを。特に「可能性の文学」に関しては、現代でもなお深い溝があると思われる日本文学と海外文学に関していろいろと考えさせてくれる評論だったのでちょい長めに感想を書いてます。

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2009年11月11日 (水)

「真鶴」 川上弘美

真鶴 (文春文庫)

真鶴

川上弘美

文春文庫 2009.10.
(original 2006)

芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したことでも話題になっていた川上弘美の長編が文庫化。非常に評判が良い作品なので、川上ファンとしてはとても気になっていた作品です。

主人公は12年前に夫が失踪し、現在は、娘と母と3人で暮らす京。夫の日記に残されていた言葉を辿って、真鶴を旅する彼女は、既婚者である恋人と逢瀬を重ね、「ついてくるもの」の影を感じながら日々を過ごすのだが・・・。

これまでの川上作品の集大成だな、というのが第一印象でした。

この1つ前に読んだ「夜の公園」での必要以上な艶かしさも全てこの作品への布石だったのではないかと。しかも、最近の作品では影を潜めていた「うそばなし」が久々に登場し、「ついてくるもの」の存在が主人公を急き立て、物語を進めていくところがまた面白い。

ただ、これまでの作品と比べて男性キャラの魅力がイマイチだったり、美味しそうな食べ物が出てこなかったりってこともあって、そういう点での川上作品らしさはあまり感じられず。個人的にはもうちょっとほんわかした作風の作品のほうが好きなんだよね。

ちょっと粘着質が過ぎる印象で・・・。

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2009年10月27日 (火)

「グランド・ブルテーシュ奇譚」 バルザック

グランド・ブルテーシュ奇譚 (光文社古典新訳文庫)

グランド・ブルテーシュ奇譚
(la grande breteche)

オノル・ド・バルザック
(Honore de Balzac)

光文社古典新訳文庫 2009.9.
(original 1830-36)

人間喜劇という概念を知ったときから、ずーーーっと気になっているバルザック。どこから手を付けたらいいものやら迷いながらもうかなりの年月が経ってしまっているのですが、古典新訳文庫にて短編集が出たので、良いきっかけになると思い読んでみることにしました。

4つの短編と評論が1つ収録されています。

短編はどれも、悲哀の感じられる物語で、落としどころもしこりが残るような感じだったのがちょっと意外。全体的な印象としては、浪漫が好きだけれど、人間を観る眼差しは結構厳しいという感じです。

あと、それぞれに面白い個性が感じられるものが選ばれていることもあって、なかなか楽しく読むことのできる1冊でした。

以下、収録作品にコメントを。

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2009年10月14日 (水)

「リズム」/「ゴールド・フィッシュ」 森絵都

リズム (角川文庫)  ゴールド・フィッシュ (角川文庫)

リズム

ゴールド・フィッシュ

森絵都

角川文庫 2009.6.
(original 1991)

森絵都さんのデビュー作『リズム』とその続編である『ゴールド・フィッシュ』が同時に文庫化されたのを読んでみました。

主人公さゆきは近所に住む従兄の真ちゃんに憧れる中学1年生。高校には通わずミュージシャンを夢みながらバイトをしている金髪の真ちゃんと親しくすることを周囲はよく思わないのだが・・・。(『リズム』)

中学3年になったさゆき。夢を求めていた真ちゃんと連絡が取れなくなったり、幼馴染のテツが大人びていく中、高校受験を控え、自分の将来を考え始めるのだが・・・。(『ゴールド・フィッシュ』)

どちらもあまり長い作品ではないので、2冊まとめて気軽に読むことができ、結果、感想も1つにまとめてしまいました。

森さんのデビュー作ということですが、しっかりとまとめられていて、どうやら改稿されてるようではあるものの、今の作家としての成功があるのも納得な作品でした。20代前半の作品かと思うと、流石!の一言に尽きます。

 

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